【王滝村滞在制作記】文・近藤太郎

王滝村に2泊3日で絵を描きに行った。依頼は2件あり薪ストーブの炉壁とピザ窯の壁に絵を描くというもの。今回はピザ窯に絵を描きに行った。 今回熱を帯びるかもしれない場所への描画だったので一体どんな材料で描けば良いのか、一体全体分からなかった。けれど色々調べているとフレスコ画という技法に辿り着いた。耐久性に関しては歴史が証明している。フランスのラスコーやスペインのアルタミラの洞窟壁画も天然のフレスコと言われ2万年もの長い間存在している。 そして熱に関しても、フレスコ画では支持体に石灰モルタル(漆喰)を使い、漆喰自体耐火性能が高い。 ストーブの炉壁にフレスコ画を描いた前例はなかったけれど挑戦してみようと思った。 少し原理を説明すると、フレスコ画は生乾きの石灰漆喰の上に描いていく技法で、描かれた絵がガラス質の成分を持った石灰水に包み込まれ、それが空気に触れて結晶化すると同時に顔料を閉じ込め壁面に定着させるというものだ。顔料を画面に定着させる為に糊材などの展色材を使わないので顔料その物の色の輝きを持つ。ちなみに「フレスコ」とはイタリア語で「新鮮な」を意味するらしい。 ピザ窯があるのは王滝村滝越の水公園という場所で休日は、家族連れやキャンプに来たお客さんなどがそこでピザを食べたり蕎麦を食べたり、釣り堀もあってニジマスを釣って焼いて食べる事も出来る。そんな場所だからみんなが楽しくなる様な絵を描いて欲しいと依頼された。一応行く前に二枚下絵を描いて行ったけれど、本当にこれで良いのかなぁ〜と感じていた。とにかく思いつく事がピザという情報だけでピザを前面に押し出すもののなんかピンと来なかった。一つ僕が下調べで行った時に気になった存在が水公園のキャンプ場の管理人をしている依頼人のお父さん「五男さん」だった。 描くものを何にしようかのモヤモヤとしながら現場に入った。 1日目、下層の漆喰塗りを終え何を描こうか?と考えていたら五男さんが一緒に夜ご飯でもどう?って誘ってくれた。食事は最初ビールで乾杯。しめ鯖とニシンの煮付け。五男さんに美術とはどんなものか、絵とはどんなものかという事を聞かれたので自分の絵の事を話したり、逆に僕は五男さんの故郷の海や里山の話を聞いた。ちっさい頃メジロをたくさん捕まえた話。そして今は山に入る事が願望だという事も。その想いは子供の頃の気持ちがまた戻ってきているという事に不思議と感動し、歳をとって若い頃には無かった感情が生まれたという話には感情が新しく生まれる事なんてあるのか!!と驚いた。そしてビールが3本目になる時に、大豆の入ったモチモチの玄米ご飯、キャベツと煮干しと卵の炒め物を持ってきてくれた。どちらも衝撃的な美味しさで本当にびっくりした。 夜ご飯を終えてピザ窯の前に戻ると子狐が普通にこっちを見ていた。嘘って思ったけど、キツネってなんか危ない病気持っているんじゃなかったっけと怖くなり「ヒューッ」てキツネに向かって言ったらすぐに逃げて行ってしまった。 絵の内容は五男さんとの晩餐とこのキツネの事にしようと決めた。 2日目にほとんど描きあげた。その日も五男さんと夜ご飯を食べた。ビールで乾杯し、五男さんのお袋の味を食べた。煮干しと豚肉と大根とコンニャクの煮付けで甘い汁がとても美味しかった。昨晩同様3杯目の時に大豆入りの玄米ご飯、そしてそれにハヤシライスをかけて食べた。究極の組み合わせの様に思えた。話は恋の話だったりもしたが、五男さんは若い頃は恥ずかしいねっと言ってあまり話してくれなかったが、僕は今恥ずかしい真っ最中なんだっ!と自覚した。むしろ五男さんでも恥ずかしいほどなのだからとなんだか安心した。主義の話もした。五男さんがどんな世界を理想としているのかという事も聞いた。僕は主義がありませんとハッキリ言った。 五男さんは誠実と謙虚さがあればきっと道は開かれるよって教えてくれたのでそれだけは守ろうと思ったけど、五男さんでさえも誠実ではないと言っていたので本当に難しい事なんだなぁと思いながら2日目の夜ご飯を終えた。 ちなみにその日子熊が走っているのを見かけてそれも描こうと思った。 3日目の朝に完成した。全ての絵の記憶は五男さんに話しておいたのできっと僕が居なくてもそれぞれの夜の事や、動物に会った話を五男さんがお客さんにしてくれるだろうと思う。初めてのフレスコでちゃんと出来ているか心配だけど1万年後も昨日のことの様に僕と五男さんの記憶が新鮮に残っていたら素敵な事だなぁと思う。 次はストーブの炉壁、頑張りたい。




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